空中散華

平石 祐一   

    はれた青空のたかみに
    つぎ つぎ つぎ と
    高射砲の
    炸裂した黒い煙が
    いくつもの帯となって流れ
    そのさらなる高みを
    きらっと輝く巨体B29 群が
    ゆっくりと去ってゆく

    その後を白い航跡のこし
    何かが食らいついたと僕ら少国民が思ったら
    パッと閃光が走る

    “やった! やった!”
    巨体は片翼煙吐いて編隊離脱
    戦闘機は錐揉みで落下途中
    紅蓮の炎となって散華

    夢中で追う僕らの前に
    ひらひら落ちてきたのは
    アルミニュウムの大きな破片
    掌にとったら血肉がピシャリと
    張り付いていた


         −朝日新聞昭和20年1 月10日写真・記事報道、同級生前田君の回想録による−
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