勤労動員 −王子陸軍造兵厰にて−

平石 祐一   
   朴歯をはかないと 旋盤に届かぬ
   われら中学2年生
   でも機関砲の弾を
   懸命につくろうとしている

   やめておけと軍人班長や職工頭はいう
   明日サーベル将校が視察にくるのに
   旋盤回す材料切れると困る…と

   ぼくらが生意気だと
   サーベル抜いて みんなの前で
   平手打ちしたあと
   週一楽しみの栗まんじゅうを
   マントに隠しもって帰った後姿

   ひるやすみ
   語り歩いているぼくらに
   歩調取れ頭右がないと
   何遍もどなりつけ やりなおさせた

   弾丸の出荷が落ちているからと
   火薬量検査の工程を省略させた
   生産増強週間に
   “戦地の兵隊さんが危険じゃないか”
   ぼくらはみんなで
   黙って睨み返した
   工場は三日間空回り

   あいつらだ
   敗戦になったら
   トラックで被服・食料を山積みして
   一目散 なだれをうって廠門を出ていった
   池の鯉までからっぽ
   残されたぼくら
   日本刀つくりのオジさんに教わり
   猛宗竹を エイ ヤア エイと
   唇かんで切りつけ続けた


                                ‐わが同級生たちの体験記録からー

     
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