父の顔
平石 祐一
浅草寺裏庭の
並べられた担架の上で
父はこと切れていた
額の真ん中
爆弾の破片が深々つき立っていた
看護婦さんが抜きとり焼酎で拭いてくれた
跡はどす黒くえぐれていた
顔中ふくれた皮膚一面に
無数の石粒がめりこんでいた
黒いオーバーの縫い目が大きく裂けたのをまとった父
やっと近寄り 中学生の僕は
初め指であとは釘で
石粒をほじりだして
茶碗の中へそっと移すのを繰り返した
茶碗の中で小片が1/3 になったろうか
“坊 もう いいだろう”と声がかかった
荼毘がせかせられていた
夕暮れ
だれの骨と分からぬのを拾わせられ
それを抱いて母と帰宅した
昭和20年1月25日同級生初野君の回想から